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不妊治療とは? 不妊治療施設の選び方

晩婚化が進む日本において、今や不妊治療はカップルのうち5組に1組は何かしらの治療経験があると言われています。不妊治療のまたの名を『生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)』といい、生殖補助医療の技術は年々進歩しています。
不妊治療はマイナスなイメージで話題に上がりやすいですが、早めに不妊治療を行うことで妊娠しにくいと言われる夫婦であっても赤ちゃんを授かることは、現代の技術では可能になってきています。
今回は不妊治療の事や不妊治療施設の選び方について、詳しくとりあげていこうと思います。

不妊症とは?
女性不妊の原因は?
男性不妊もある
不妊治療は何をするの?
医療機関を選ぶ時のポイント
まとめ

1.不妊症とは?

不妊症の定義は、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交渉を行うが、1年以上妊娠しない状態であることとされています。以前は2年のラインが引かれていましたが、晩婚化であることや不妊治療はできるだけ早く取り掛かった方がいいことなどを理由に、2年から1年へと変更されました。

2.女性不妊の原因は?

妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会うためにあらゆる条件をクリアしなくてはなりません。不妊症の原因には、明らかになる因子が90%、不明である因子が10%あるといわれており、また多くの因子が重複している可能性があります。ここでは女性の不妊の原因になりうるといわれている因子について、ご紹介致します。

女性不妊の原因

1 排卵因子(はいらんいんし)
毎月規則的にくる『生理(月経)』の前には排卵をしており、その排卵機能に何かしらの異常をきたして無排卵になってしまったり、定期的に排卵できなくなったりします。主な原因としては甲状腺ホルモン異常症や多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)、極度の肥満や痩せなどが挙げられます。

2 卵管因子(らんかんいんし)
卵子と精子が出会う場所である卵管が詰まってしまい、通過障害が起きることで不妊症になります。主な原因はクラミジア感染や内膜症による癒着(ゆちゃく)などが挙げられます。

3 子宮因子(しきゅういんし)
排卵しても内膜が準備できておらず着床できなかったり、子宮そのものの奇形などでうまく着床できなかったりすることで不妊症になります。主な原因として子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどが挙げられます。

4 経管因子(けいかんいんし)
子宮の入り口である子宮頸管(しきゅうけいかん)部分の粘液量が減ったり粘液度が低下したりすることで精子が子宮に入りにくくなり不妊症の原因になります。ヒューナーテストはこの経管粘液の検査を行い妊娠しやすい状況かをみていきます。

5 免疫因子(めんえきいんし)
何かしらの自己免疫が働き、子宮外生物である精子を除去しようとして不妊症になることがあります。抗精子抗体を持つ場合に精子を攻撃してしまい、精子の運動能力を喪失させ妊娠することができなくなります。

6 原因不明の不妊症
約1割の確率で原因不明の不妊症もあります。ストレスを感じることも大きな原因と考えられていますが、今だに解明できておりません。

3.男性不妊もある

不妊症でよくクローズアップされるのは女性が原因の不妊症ですが、実は男性が原因の不妊症は半数の割合であるとも言われており、近年ブライダルチェックなど男女ともに検査を受けるカップルも増えてきております。

男性不妊の原因

1 造精機能障害(ぞうせいきのうしょうがい)
なんらかの原因で精子の数が少ない、あるいは無い、精子の動きが悪い、精子の形状が変化しているなど精子が原因で不妊症になります。この造精機能障害の主な原因と言われているのが精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)です。精子は熱に弱いという特徴をもっていますが、精索静脈瘤は精子を温めてしまい不妊の原因になってしまうのです。

2 精路通過障害(せいろつうかしょうがい)
精子が睾丸(こうがん)で作られて、ペニスの先までに通る道に何かしらの異常があり通れないことで不妊症の原因となります。精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)などが原因になることがあります。

3 精機能障害
セックスで射精することがなきないことによる不妊症です。勃起不全や膣内射精障害(ちつないしゃせいしょうがい)などが挙げられます。糖尿病やストレスなど様々な原因で起こりうる可能性があります。

4 加齢による影響
男性も加齢により35歳を過ぎると精子の質の低下が起きると言われています。

4.不妊治療は何をするの?

不妊治療にはステップがあり、ひとつずつチャレンジしてダメであればさらに上のステップにいく、という流れで治療を行っていきます。一般的な不妊治療のステップをご紹介致します。

<ステップ1:タイミング法>
おりものの状態や基礎体温、また超音波にて卵胞や採血によるホルモン値をみて排卵日を把握して排卵日に性交渉を行い、自然妊娠を目指す方法です。

<ステップ2:タイミング法+注射>
ステップ1のタイミングをはかるものの自然妊娠しない場合に、タイミングに合わせて排卵や卵胞の成長を促す注射を打ちます。そうすることでより確実に排卵日を確定し、性交渉をすることができます。

<ステップ3:人工授精(じんこうじゅせい)・AIH(エーアイエイチ)>
タイミング法をはかってもなかなか妊娠しない場合やヒューナーテストの結果が悪い方、男性不妊の可能性がある方などが行います。
精液を医師の手を介して子宮内に注入する方法で、子宮頸管(しきゅうけいかん)には異常があるが子宮の状態が良い方などに人工授精は有効です。

<ステップ4:体外受精(たいがいじゅせい)・IVF(アイブイエフ)>
一定期間人工授精をしても妊娠しない方や男性不妊の原因の可能性が強い方などが行います。卵子と精子を体外で受精させ、受精卵になったのを確認後、子宮内に受精卵を戻す方法です。

<ステップ5:顕微授精(けんびじゅせい)・ICSI(イクシー)>
体外受精よりもさらに人の手を介す方法で、顕微鏡を使用して卵子と精子を人工的に受精させ受精卵をつくります。その後子宮内に受精卵を戻す方法です。

これらのステップを介しながら、不妊治療は毎月の生理周期に合わせながら治療を行なっていきます。

5. 医療機関によって違いと選ぶ時のポイント

不妊治療施設は、日本産婦人科学会のデータによると約600施設以上あると言われています。施設ごとに金額も施術内容も違っており、600施設の中から自分にあった医療機関を見つけるのは容易ではありません。しかし、年齢的な制限時間が決められている妊娠だからこそ、時間をかけて医療機関を選ぶ時間もありません。ではどのように不妊治療施設を選んでいけばよいか、選ぶ時のポイントをご紹介します。

まず不妊治療を行っている産婦人科・婦人科の医療機関においては、大きく以下の3パターンがあります。

  不妊治療 高度不妊治療
  不妊相談 タイミング
療法
人工授精
(AIH)
体外受精
(IVF)
顕微授精
(ICSI)
一般の産婦人科や婦人科 × × ×
不妊治療を行っているものの
高度不妊治療は行っていない
医療機関
× ×
不妊治療を主として
高度不妊治療を行っている
医療機関

1つ目は、不妊相談やタイミング療法のみ相談している医療機関で、これらについては産婦人科や婦人科であれば概ね相談、診察が可能です。しかし不妊治療に特化しているわけではないので、人工授精以上の不妊治療を行う場合は不妊治療専門の医療機関に変更する必要があります。しかしながらかかりつけの産婦人科や婦人科で相談できますので、気軽にかかれるのが特徴です。

2つ目は、不妊治療を行っているものの培養室や採卵室といった特殊な設備を備えていなく、人工授精までの治療を実施している医療機関です。この医療機関は、培養室で胚を培養する胚培養士(エンブリオロジスト)がいないことが多く、医師が治療を行い、人工授精まで対応しております。高度不妊治療の体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を行う場合は、高度不妊治療施設に変更する必要があります。産婦人科で出産を行っている医療機関においては人工授精まで対応している施設も多く、妊娠したらそのまま出産までできるのは心強いポイントです。

3つ目は、高度不妊治療施設として培養室や採卵室、回復室、採精室などの特殊な設備を有している生殖医療の専門医療機関です。生殖医療において胚の培養を行う胚培養士(エンブリオロジスト)がおり、不妊相談から体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)の全てに対応している医療機関です。高度不妊治療施設であれば、不妊治療の助成金施設になっていることも多く、助成金の対象施設であれば助成金を活用した治療をすることが可能です。また不妊治療に特化しており、不妊治療のデータ収集もしておりますので概ね妊娠率などの情報開示をしている所が多いですので、是非妊娠率の成績もご確認頂ければと思います。不妊治療を行う生殖医療専門の医療機関になりますので、医師以外にも不妊カウンセラーや胚培養士の相談なども行っている医療機関もありますので、不妊治療について色々と細かく相談できる医療機関が多いのが特徴です。

3つの施設の中で、1つ目と2つ目においては妊娠率の情報開示まで行っている所は少ないと思いますが、3つ目の生殖医療専門の医療機関においては情報開示している所も非常に多いです。そのため、実力のある生殖医療機関を選ぶコツとしては、治療件数や妊娠率などの実績のある生殖医療機関を選ぶのはポイントです。実績のある生殖医療機関は患者さんからの人気も高いため待ち時間などが長くなる可能性も高いのですが、その分実力がある生殖医療機関ということです。
口コミサイトでも生殖医療機関の特徴がコメントされておりますので参考にして頂き、生殖医療機関のホームページにて治療件数や妊娠率が開示されていればその結果の数値が高ければ実力がある証拠です。
不妊治療は、治療を行っても時間がかかるケースがありますので、妊娠実績を見て選ぶのもポイントです。

また生殖医療専門の医療機関で診てもらいたい人にとっては、医療機関の規模の大小よりも、不妊治療専門の生殖医療機関であるかどうかが重要です。一般婦人科疾患を主として診ている医療機関、施設規模が大きい医療機関や出産を行っているから不妊治療もやっているだろうと思われますが、医療機関として不妊治療を専門的に行っている生殖医療機関の方が、より専門的な治療をしてもらえる特徴があります。

しかしながら上記施設の違いを理解して、医療機関のうまい使い分けをしている患者さんも中にはおります。どういう方法かというと、初めから生殖医療機関で不妊治療を行う人もおりますが、生殖医療機関は混んでいる所が多いため初期の不妊治療については待ち時間の比較的少ない一般の産婦人科や婦人科にかかって時間を有効に使いながらタイミング療法を実施することです。

タイミング療法で妊娠をすれば、多くの待ち時間をかけないで治療ができる医療機関は良いですよね。もし何回か実施して妊娠しない場合は、人工授精(AIH)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)を行っている生殖医療機関を受診すればよいので、自分に合って、うまく医療機関を使っていくのが良いと思います。

不妊治療は自分の仕事などの都合に合わせることは難しく、自分の体質やホルモンの状況に合わせて行っていく必要があります。そのため通院のしやすさも、とても重要です。来院回数がある程度予測されますので、通勤場所から通いやすいことも大切ですし、治療と仕事を両立できず泣く泣く仕事を辞める女性も多くいます。金額的な負担の大きい不妊治療だからこそ、できるだけ仕事と両立して治療が進められるように通いやすい医療機関を選定するのもポイントです。

6.まとめ

不妊治療は「神の領域」の医療と言われており、命を生み出すことが出来るようになった現代の最新の医療技術であると言えます。これまで不妊で子供を授かることができなかったカップルも、治療をすることで妊娠することが出来るようになったりもしております。

日本は少子高齢化に突入しており、晩婚化も不妊治療を行う要因になっております。2017年の日本では、約5.6万人が生殖補助医療により誕生しており、全出生児の6%にあたり、約17人に1人は生殖医療技術によって誕生しております。

しかしながら不妊治療には仕事との両立に課題や悩みを抱えている女性が非常に多く、中でも精神面、通院回数の多さ、体調や体力面で仕事との両立ができないと挙げられている女性が大半です。そのため仕事と不妊治療の両立ができず、約16%近くが離職をしている状況です。

また不妊治療の知識について、平成29年の調査では約76%の方が不妊治療に係る実態を殆ど知っていなく、まだまだ不妊治療に対する壁もあるのが現状です。是非1人で悩まずに、ご夫婦で、難しければ生殖医療機関では相談体制も整えている医療機関が多いですので、先ずはどのような方法があるか、どの様にしたらよいか等でも気軽に相談し、今後の夫婦の在り方、子供を授かるということ、子供を育てるということ等を、今一度夫婦で話し合い、同じ方向を向いて是非最適な夫婦生活を考え、不妊治療を行うのであれば自分に合った不妊治療をして頂ければと思っております。

この記事を監修した人
身原正哉(MASAYA MIHARA)

産婦人科専門医で医療法人倖生会身原病院 院長。
専門医:公益社団法人 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本抗加齢医学会 日本抗加齢医学会専門医、母体保護法指定医師、日本産婦人科医会「硬膜外麻酔下での分娩を安全に行うために」講習会修了、麻薬管理者、麻薬施用者、京都市立病院登録医