京都の産婦人科(無痛分娩)・不妊治療は身原病院

身原病院

お役立ち情報

不妊治療の助成金・保険適用について

不妊治療のうち体外受精や顕微授精の特定不妊治療はこれまで自由診療で公的保険の対象外でしたが、不妊に悩む方への特定支援事業において令和2年度第三次補正予算案の閣議決定がなされ、不妊治療に対する助成と将来的に不妊治療の保険診療検討が示されました。 内容については閣議決定されておりますが、2021年1月31日現在、申請方法や手続き方法についてはまだ詳細内容は公開されておりません。しかしながら助成内容については発表されておりますので、ここで解説させて頂きます。 また不妊治療の保険適用についてもスケジュールが示されており、今後検討が進められてゆくと思います。こちらも合わせて今わかっている祷応報をご案内させて頂きます。

不妊治療の助成が拡充
対象となる治療
対象となる方
不妊治療の保険適用について
まとめ

1.不妊治療の助成が拡充

①助成拡大の意図とどういったことが拡充されたのか。
子供を授かりたくても晩婚化の影響もあってか、不妊治療をする方が増えているのが現状です。また初期不妊治療のタイミング療法や人工授精で妊娠される方もおりますが、年齢が高くなることで妊娠しにくく、高度不妊治療の体外受精や顕微授精に移行される方も多いのが現状です。 高度不妊治療については非常に高額で、自由診療のため保険適用が無いことから患者様負担が大きく、金銭的負担は強いられております。これまでも回数や年収制限があるものの特定支援事業での助成金がありましたが、今回新に発表された内容はより一層の制限緩和と助成額の増大がなされております。また不妊治療の保険適用をすることが示されたことも、大きなポイントです。保険診療の具体的に拡充される内容は令和3年度(2021年度)中に詳細を決定し、令和4年度 (2022年度)当初から保険適用を実施することを目標として調整を進めてゆくようです。そのため今後の制度の内容がどの様になるかも気になる所です。 保険適用までの間は不妊治療の旧助成制度で問題視されていた所得制限の撤廃を行い、また助成額の増額(1回30万円)などを行います。経済的に負担があり不妊治療を諦めていた方も、対象拡大と大幅な拡充によって家族計画を立てることができるようになります。

②内容の新旧比較
 対象年齢の変更はありませんでしたが、所得制限の撤廃、助成額の増額、助成回数が1子あたりへの変更、対象者を事実婚のカップルにも拡大が大きく変更された点になります。

  所得制限 助成額 助成回数 対象年齢 対象者
旧制度 730万円未満 (夫婦合算の所得) 1回15万円 (初回のみ30万円) 生涯で計6回まで 妻の年齢が43歳未満 法律上の婚姻をしている夫婦
新制度 無し (旧制度の撤廃) 1回30万円 (凍結胚移植〔採卵を伴わないもの〕及び採卵したが卵が得られないなどを理由に中止したものについては1回10万円) 1子ごとに6回まで (40歳以上43歳未満は3回まで) 変更なし 事実婚も対象

2.対象となる治療

①対象となる治療は?
助成が対象となる治療法は、特定不妊治療の体外受精、顕微授精のみとなっています。特定不妊治療に含まれないタイミング法、人工授精、保険診療で行う各種検査などは対象外となりますのでお気をつけください。

②どこでも治療ができるの?
助成にあたっては、各都道府県などの事業実施主体が定める医療機関となります。そのためどこでも助成が適用されるわけではないため、助成対象医療機関となっていることをご確認下さい。体外受精、顕微授精を実施している特定不妊治療を実施している医療機関のみが対象となると思われます。​

3.対象となるかた

①対象となる方
新助成制度の対象となる方は、厚生労働省では以下の2つを示してしています。 ①特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された夫婦 ②治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦 つまり、治療を始めた最初の日が42歳(43歳の誕生日を迎える前まで)であること、またタイミング療法や投薬などで不妊治療を行ったが妊娠をする可能性がとても低いと医師が診断した場合で、特定不妊治療に進むご夫婦が対象となります。また、これらの助成は領収書と必要な書類を添えて自治体に申請する必要があります。 ※43歳以上の方は、自治体によっては新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例措置により適用年齢が延長される可能性もあるため、お住まいの自治体に確認するようにしましょう

②いくら助成してもらえるの?
旧制度の助成額は、1回目30万円、2回目以降15万円となっていますが、新制度からは2回目以降も30万円に引き上げられることとなりました。また生涯で最大6回までとしていた助成の回数を、子ども1人につき最大6回までと緩和されました。2子では助成回数がリセットされるため、再度制度を利用することができるようになります。 ただし通算助成回数については、初めて助成を受けた治療期間の初日の妻の年齢が40歳未満であるときは6回まで、40歳以上であるときは通算3回までと示されているため、40歳の誕生日前までに治療を開始しているかどうかで助成回数が変わってくるので、ご注意下さい。 また所得制限は撤廃されたため、共働きで収入が多い方も働きながら不妊治療を受けることができるようになります。 最終的には2022年4月に保険適用を目指して検討なされるため、保険適用となった場合は今後より一層不妊治療が受けやすい社会になるのではと考えられます。​

③過去に不妊治療をした人はどうなるの?
2021年1月1日以降に終了した治療が対象となりますので、過去の治療に関しての助成適応ではありません。そのため2020年12月31日までの治療分は旧制度の対象となります。

④申請方法
1月31日現在、どの自治体からも申請方法については明確に提示されておりません。各自治体とも国からどの様に進めてゆくかの方針を待っている状況で、近々発表があるのではと思っております。 もし一早く詳細情報を得たい場合は、お住まいの自治体に問い合わせるか自治体のホームページを確認頂ければと思います。治療進行中の方は、詳細決定まで必ず領収書は捨てずに保管するようにしましょう!

4.不妊治療の保険適用について

①保険適用の意図
近年、日本における少子高齢化は急速に進行しており
高齢者に偏りがちな給付を見直すことの必要性、現役世代の負担の軽減、 今後の世代を担う子供達への充足が必要であることが指摘されていました。
菅内閣の発足後は、少子化対策や医療改革について議論が行われ、全世代型社会保障改革の方針を定めることになっております。
お年寄りだけではなく、子供達や子育て世代、さらには現役世代まで広く支えていくために、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討することで、 すべての世代が公平に支え合う「全世代型社会保障」を目標に大きく改革が進んでいくのではと思われます

②今後のスケジュール
■2021年1月1日から2022年3月末まで
・2021年1月 :不妊治療助成金の拡充(1回30万円を1子につき6回、所得制限排除等)
・2021年夏頃 :学会ガイドラインを完成、中医協で議論
・2022年年明け:中医協で保険適応を決定
■2022年4月以降
・2022年4月 :不妊治療の保険適応開始予定

③それぞれの治療の金額
体外受精や顕微授精は保険適応ではないため、高額になるという話をよく耳にします。
これは日本ではまだ認可されていない薬剤を使う治療も多くあったり、不妊治療に関わる設備投資が大きいこと等が要因と考えられ、 また保険適用が無いために支払総額が高額になってしまっております。
では実際に治療されている不妊治療は、いくらかかるのでしょうか?
実はこの金額は医療機関や地域によって全く異なり、一概にいくらとは言えません。今から紹介する金額は1つの目安として下さい。
基本的な体外受精の治療は、卵巣刺激→採卵→受精・胚培養→胚移植→妊娠確認という流れです。これらはおおよそ1回40〜70万円ほどかかります。
また1回で妊娠確認できる方は多くなく、体外受精を繰り返す方が多い現状です。
「女性を応援するWebメディア「妊活ボイス」様の2017年10月に実施された「妊活・不妊治療」に関するインターネット調査」によると、 「妊活全般にかかった費用」は平均で約35万円であり、人工授精・体外受精・顕微授精のいずれかを経験した方に限ると、平均費用は約134万円まで上昇します。
さらに不妊治療の中でも高額となる高度不妊治療(体外受精・顕微授精)の経験者となると、その治療費の平均は193万円まで上昇するようです。

(Webメディア「妊活ボイス」2017)
このことから、特定不妊治療に対しての助成がどれだけ経済的な負担を軽減するかがよくわかります。

5.まとめ

今回の不妊治療の拡充は、助成額の増額だけではなく、所得制限の撤廃、事実婚も助成対象とする等、これまでの不妊治療の助成とは大きく拡充方向に変更されました。少子高齢化、晩婚化する日本の出産サポート、出生率拡大など、将来の日本の人口増大に寄与しつつ、各夫婦が金銭的理由で選択肢が狭まれない様になると良いかなと思います。 またまだ詳しい手続き方法など開示されていない内容もありますので、今後も新しい情報があれば改めて情報提供させて頂ければと思います。

この記事を監修した人
身原正哉(MASAYA MIHARA)

産婦人科専門医で医療法人倖生会身原病院 院長。
専門医:公益社団法人 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本抗加齢医学会 日本抗加齢医学会専門医、母体保護法指定医師、日本産婦人科医会「硬膜外麻酔下での分娩を安全に行うために」講習会修了、麻薬管理者、麻薬施用者、京都市立病院登録医